手影絵

影絵の発端となった手影絵の事について書こうと思う。

手影絵とは文字通り手で色々な物を型取り影にして楽しむ物だ。
江戸時代に行われた手影絵は、手での表現だけではなく表現する物の一部を紙型に切り取り、手などに付けて鳥が羽ばたく様を表現して遊んでいた。
使っていたスクリーンは和紙だったが、作り方が面白い。襖を和紙の寸法ぐらい少しあけて、右と左に少し開かれた襖の縁に和紙を貼り付け、影絵を写していたらしい。

見る側は影絵を写している側と反対に座して見る。そのせいで今見ている手影絵がどんな仕掛けで行われているか見えない為、影絵の神秘性が高まり、おもしろさも増したわけである。
これが後に写し絵の映写方法の原点になるわけなのだが、西洋の影絵は写している側と観客が同じ場所なのに比べ、日本の影絵はそれぞれがスクリーンをはさんで座ると言う対照的な映写方法だった。

手元や仕掛けを見せないと言う所から、この時代は今で言う手品と同じような扱いを受けていたのと仕掛け影絵が普及する要因となった所だろう。
宴会の座興としてどんどん広まって行った影絵だが、この頃の影絵は座興の域を越える事はなく、今民芸として伝わっている影絵の片鱗は見いだされてはいなかった。
やがて大人が宴会の席で行っている手影絵は、子供にも普及しはじめると同時に、宴会の影絵はその場にある器や体を使った影絵に進化し、影絵にもだんだんと新たな要素が混ざりはじめるようになった。

今まで話した内容で理解して頂きたかった事は、手の内を見せない、仕掛けを見せないと言う影絵のコンセプトがここで生まれたと言う事で、それが写し絵にも引き継がれ、仕掛けがある種板や幻燈機は見せずに観客の好奇心を誘う所は正に影絵の原点であると言う点だった。
影絵は手品などにも利用され、色々な事に影響を及ぼした芸能と言える。