明日、2026年3月3日。桃の節句、ひな祭りの夜ですね。 ちらし寿司やひなあられの準備で忙しいご家庭も多いかもしれませんが、ちょっとだけ、夜空のスケジュールも空けておいてほしいんです。
というのも、明日の夜は日本全国で「皆既月食」が見られる、特別な夜だから。
国立天文台の発表によると、月が欠け始めるのは18時50分ごろ。ちょうど夕飯を囲んでいる時間帯かもしれませんね。そして20時4分には、月が地球の影に完全に入り込む「皆既食」の状態になります。
今回の月食、何がすごいって、条件がめちゃくちゃ良いんです。空の低い位置ではなく、見上げやすい高さで、しかも欠け始めから終わりまで全部見られる。これは、天体観測ファンじゃなくても、ちょっとワクワクしませんか?
宇宙が仕掛ける「影」のいたずら
「月食」という言葉を聞くと、理科の授業を思い出す人もいるかもしれません。太陽、地球、月が一直線に並んで、地球の影が月に落ちる現象。
でも、実際に夜空を見上げて、さっきまであんなに明るかった満月が、じわじわと削られていく様子を見るのは、何度経験しても不思議な感覚になります。まるで、誰かが空に大きな黒い布を被せていくような、あるいは、巨大な生き物が月を隠しているような……。
昔の人たちは、この現象を「不吉な予兆」として怖がることもあったそうです。でも、今の私たちは、これが「影」の仕業だと知っています。
そう、これって究極の「影遊び」なんですよね。 地球という巨大な物体が、太陽という強烈なライトを浴びて、宇宙という真っ暗なスクリーンに影を落としている。その影の中に、月がひょいっと入り込んでいく。そう考えると、なんだか宇宙が急に身近なものに感じられてきませんか?
「赤銅色」に隠された秘密
月が完全に影に隠れたとき、月は真っ黒に消えてしまうわけではありません。 「赤銅色(しゃくどういろ)」と呼ばれる、渋い赤色に染まります。
「影の中にいるのに、なんで赤く見えるの?」って思いますよね。 実はこれ、地球の大気がレンズのような役割を果たしているからなんです。太陽の光が地球の縁を通るとき、夕焼けと同じ原理で、青い光は散乱し、赤い光だけが屈折して月に届く。
いわば、地球が「天然のフィルター」になって、一番美しい赤色だけを月に届けているんです。 この赤色は、その時の大気の状態によって毎回微妙に違うそうです。チリが多いと暗い赤に、澄んでいると鮮やかなオレンジに近い赤に。明日の夜、私たちの頭上に浮かぶのは、一体どんな「赤」なんでしょうね。
便利すぎる時代に、あえて「待つ」贅沢
最近は、スマートフォンのカメラ性能も上がって、月も綺麗に撮れるようになりました。SNSを開けば、誰かが撮った超高精細な月の写真が流れてきます。AIが生成した、本物よりも美しい「完璧な宇宙」の画像も、すぐに見つかります。
でも、自分の目で、あの少しずつ欠けていく「もどかしいスピード感」を体感するのは、全く別の体験だと思うんです。
冬から春へと移り変わる、少し冷たい夜風。 近所の公園やベランダから、首を痛めそうになりながら見上げる空。 暗闇に目が慣れてくるまで、じっと待つ時間。
効率やスピードが求められる毎日の中で、宇宙のサイクルに自分の時間を合わせてみる。そんな「不便な観測」こそが、今の私たちには贅沢な時間になるのかもしれません。
影があるから、光がわかる
光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる。 これは当たり前のことですが、普段の生活ではあまり意識しませんよね。
でも、月食の夜は、その「影」の存在が主役になります。 影があるからこそ、その形(地球が丸いこと!)がわかり、影があるからこそ、普段は見えない月の凹凸や、かすかな光の層が見えてくる。
私たちのプロジェクトでも、よく「影」について話をします。 あえて暗い場所を作り、そこに光を置く。すると、何もない空間に物語が浮かび上がってくる。今回の月食も、宇宙という大きな暗闇があるからこそ、あんなに美しい赤色が浮かび上がるんですよね。
明日の夜、もし晴れたら。 お雛様を片付ける手を少し止めて、あるいは仕事帰りの足を止めて、空を見上げてみてください。 そこには、どんなハイテク技術も敵わない、壮大な「光と影のドラマ」が上映されているはずです。
このブログを読んで、少しでも写し絵と、創作の奥深さに興味を持っていただけたら嬉しいです。ぜひ、私たちの活動や公演(現在お休み中)にも注目してください。 現代影絵プロジェクトのウェブサイトはこちら: https://utsushie.org/ また次回の「写し絵の話しあれこれ」でお会いしましょう!