安野たかひろ氏が仕掛ける「幻視影絵」の衝撃─ AIは影に意志を宿せるか?

皆さん、こんにちは。今回の「写し絵の話しあれこれ」は、少し趣向を変えて、今まさに世界を驚かせている「現代の魔法」についてお話ししたいと思います。

先日、衆議院選での活躍も記憶に新しい安野たかひろさんが手がけた、「幻視影絵」という作品をじっくりと眺める機会がありました。安野さんといえば、AIエンジニアであり、SF作家であり、そしてクリエイター……。一言では括りきれない多才な方ですが、この「幻視影絵」を初めて目にした時、私は言葉を失いました。「ああ、これは私たちが知っている『影』の概念を、根本から書き換えてしまうものだ」と直感したからです。
幻視影絵の動画https://youtu.be/arzSNV7i5_8?si=9Jv7HAUUJ70eT1am

影はもはや「従属」ではない

私たちが日常的に接する影は、常に「本体」に従うものです。光が遮られれば、そこには遮った物の形がそのまま映し出される。それが物理の法則であり、当たり前の日常です。ところが、安野さんの「幻視影絵」は、その前提を鮮やかに裏切ってくれます。

動画を観ていただければわかりますが、映し出される影は、実体の動きをなぞりながらも、どこかで「別の意志」を持っているかのように歪み、変化し、やがて全く別の像を結びます。これまでの影絵が、いわば「写実」や「シルエット」の世界だったとするならば、安野さんの手法は、AIという強力な相棒を得て、「影に物語を代筆させている」ようなもの。

AIが膨大な計算を行い、光の当たり方や角度をミリ単位……いえ、もっと微細なレベルで制御することで、本来ならあり得ない形を影として出現させる。この「計算された嘘」が、私たちの脳に心地よいバグを引き起こします。影が本体から自立し、独自の意志を持って動き出す瞬間のゾクゾクするような感覚。これはまさに、影という存在が「進化」した瞬間と言えるのではないでしょうか。

現代における「魔法」の正体

かつて、科学で説明できない現象はすべて「魔法」と呼ばれていました。現代において、その魔法の杖を握っているのは、間違いなくAIやデジタル技術です。しかし、ただ技術が凄いだけでは、人の心はここまで動きません。

安野さんの凄さは、その高度な技術を「驚き」という最も純粋な感情にダイレクトに結びつけている点にあります。難しい数式やプログラミングのコードは、スクリーンの裏側に隠され、表舞台にはただ「不思議な影」だけが残る。この引き算の美学こそが、テクノロジーを魔法へと昇華させる鍵なのだと感じます。

「幻視影絵」を見ていると、私たちはいつの間にか、それがAIによる計算結果であることを忘れてしまいます。ただ目の前で起きている現象に目を丸くし、「どうなっているの?」と子供のように身を乗り出してしまう。情報の海に溺れ、何を見ても「ああ、CGね」と冷めてしまいがちな現代において、これほどまでにピュアな好奇心を呼び起こせる表現は、稀有な存在です。

創作の未来と、私たちが受け取るもの

この作品を総評するならば、それは「デジタルによる身体性の再発見」ではないかと思います。

AIという、ともすれば冷たく無機質なイメージを持たれがちな技術が、影という非常にアナログで身体的な媒体を通じることで、これまでにない温かみや、生命感さえ帯びてくる。これは、表現者にとって大きな希望です。ツールが進化すればするほど、表現はより自由に、より深くなっていく。安野さんの活動は、その最先端を切り拓く開拓者のようです。

私たちが安野さんの作品に「天才」を感じるのは、彼が単にプログラムを組んでいるからではなく、その技術を使って「まだ誰も見たことがない、でも誰もが本能的にワクワクする風景」を形にしてみせたからでしょう。影という、人類にとって最も古くからある身近なモチーフを使いながら、AIという最新の翼で空を飛んでみせる。そのダイナミズムに、私たちは魅了されるのです。

揺らぐ境界線を楽しむ

実体と影、アナログとデジタル、真実と幻視。 安野さんの作品は、それらの境界線を曖昧にし、私たちを心地よい混乱へと誘います。その混乱の先に待っているのは、新しい時代の創作のカタチです。

私たちは、ついつい「答え」を求めてしまいがちです。「どういう仕組みなの?」「AIはどう学習したの?」と。でも、たまにはその分析の手を止めて、ただ影の揺らぎに身を任せてみるのも良いかもしれません。見えないはずのものが見える、その瞬間。それこそが、現代における最高の贅沢であり、私たちが創作に求める「救い」そのものではないでしょうか。

今回の安野さんの「幻視影絵」を通して、私自身も多くの刺激を受けました。表現の可能性は、まだまだ無限に広がっています。皆さんもぜひ、あの不思議な映像を繰り返し眺めてみてください。きっと見るたびに、新しい「魔法」が見つかるはずです。


このブログを読んで、少しでも写し絵と、創作の奥深さに興味を持っていただけたら嬉しいです。ぜひ、私たちの活動や公演(現在お休み中)にも注目してください。 現代影絵プロジェクトのウェブサイトはこちら: https://utsushie.org/ また次回の「写し絵の話しあれこれ」でお会いしましょう!