こんにちは! いつもブログに遊びに来てくださってありがとうございます。
突然ですが、みなさんは最近「おっ、これは乗ってみたいぞ!」とワクワクするような乗り物に出会いましたか?
実は先日、スマートフォンの画面を眺めていたら、ものすごくチャーミングな乗り物のニュース映像が目に留まったんです。東京都武蔵村山市にある「都営村山団地」の日常を追いかけたドキュメンタリーだったのですが、そこに映っていたのは、なんと東南アジアの街角を走る「トゥクトゥク」そっくりの黄色い屋根付き三輪自転車!
今回は、この時速10キロの小さな乗り物が運ぶ、なんとも楽しくて温かい、そしてちょっと考えさせられるお話をお届けします。
目 次
東京ドーム11個分を駆け抜ける「黄色いトゥクトゥク」
この村山団地が建てられたのは、日本の高度経済成長期のまっただ中、1966年のことだそうです。当時は都内最大級のマンモス都営団地として入居がスタートし、敷地内にある中央商店街は、毎日がお祭りのように大勢の子どもたちの声で溢れかえっていたといいます。当時の賑やかな写真を見ると、広場が人で埋め尽くされていて、見ているだけで当時のエネルギーが伝わってくるようです。
それから60年という歳月が流れ、団地も一歩ずつ年齢を重ねていきました。現在では、団地に住む人のおよそ52%が65歳以上の高齢者なのだそうです。
そして何より驚くのが、その団地の圧倒的な広さ! 敷地はおよそ55ヘクタールで、なんと東京ドーム約11個分という広大さなんです。上空からの映像を見ると、もはやひとつの巨大な「街」そのもの。
これだけ広いと、住んでいる棟の場所によっては、団地内にある中央商店街まで600メートルほど歩くことになります。元気なときなら、おしゃべりしながら歩けばすぐの距離ですよね。配置やルートによっては坂道もあるかもしれません。足腰が弱くなってしまったお年寄りにとっては、お買い物袋を両手に持って歩くにはあまりにも果てしない道のりです。
「去年、骨折して手術をしてから歩くのが大変でね……」 「これ(三輪自転車)がなかったら、もう買い物に行けませんよ」
そんな切実な声をすくい上げるために、商店街の人たちが約17年前から始めたのが、この三輪自転車による無料の送迎サービスなのでした。
街を快走する84歳現役ドライバー、鵜木さんという男性
このサービスの何が最高って、三輪自転車のペダルを一生懸命に漕いでいるボランティアの男性陣が、とにかくパワフルで格好いいんです!
そのうちの一人、団地に60年暮らし続けている鵜木(うのき)さんという男性は、なんと御年84歳。 本来なら、冷たい数字や社会のシステムの上では「支えられる側」に分類されてもおかしくない年齢です。でも、宇さんという男性は「足腰の悪い人のためには、この自転車が本当に大切だからね」と笑いながら、自分と同世代の、あるいはちょっと年下の住民たちのために、今日も力強くペダルを踏み込んで街を快走しています。
「高齢者が、高齢者を支えている」
これは、いまの日本全体が抱えているリアルで、少し切実な現実でもあります。人手不足や地域の高齢化という、真面目に考えるとちょっと身に引き締まるような課題。
だけど、鵜木さんたちの前向きな姿を見ていると、「大変な現実」すらも、なんだかカラッとした温かいエネルギーに変えてしまっているような気がするんです。義務感だけで漕いでいたら、きっとあんなに素敵な笑顔にはならないはずですから。
段差のハプニングを防ぐ、職人技の優しさ
そして、鈴木さんという女性の運転技術には、乗客への愛がたっぷり詰まった「職人技」が光っています。 いくら気持ちよく快走しているからといって、スピードを出しっぱなしにするわけではありません。路面のちょっとした段差にさしかかると、鈴木さんはそっとブレーキを握って自転車を減速させるんです。大きなタイヤが段差を乗り越えるとき、ガタン!と車体が揺れるのを防ぐためです。
「乗り上げる時にガタンってなるとさ、痛いところがある人に響いちゃうからね」
そう言って優しく笑う鈴木さん。マニュアルには書いていない、目の前の相手の痛みを自分のことのように想像する、細やかで最高に楽しい優しさの形がそこにありました。
車内での会話も、聞いていて思わずクスッと笑ってしまうような、ご近所さんならではのテンポの良いおしゃべりで溢れています。
車で1時間かけて15年前からボランティアに通っている方もまた、常連のおばあちゃんを乗せて、まるで移動式の縁側のような賑やかさでおしゃべりを楽しんでいました。
「ちゃんとご飯食べてる?」 「食べてる食べてる! でも、退院したばっかりだからさ」 「あぁ、そうなんだ。じゃあ今は体力を戻してるところだね。無理しちゃダメだよ!」
お互いの体調をツッコミ合いながら、笑い合う時間。ただの送迎バスではなく、乗ること自体がワクワクするような「最高の社交場」が、そこには出来上がっていました。
効率の時代に、あえて「時速10キロ」を選ぶ贅沢
いまの世の中、スマートフォンを指先ひとつで操作すれば、翌日には重いお米もトイレットペーパーも、一歩も外に出ずに玄関先まで綺麗に届く便利な時代になりました。どれだけ早く、無駄を省いて目的地に着くか。そういう効率の良さも、もちろん素晴らしいものです。
けれど、あえて外に出て、皆さんの漕ぐ時速10キロの三輪自転車に揺られながら、「最近どう?」と顔を合わせておしゃべりをする。
この三輪自転車が運んでいるのは、きっとお買い物袋だけではないんですよね。「あなたのことを今日も気にかけているよ」という、人と人との体温が伝わる繋がりそのものを、楽しく、賑やかに運んでいるのだと思います。
効率の良さのなかでは簡単に消えてしまう、人間らしい「手触り」や「楽しさ」。 そんな、目には見えないけれど大切な温もりを、あの黄色い三輪自転車は、今日も団地のなかにゆっくりと届けています。私も、誰かを想って自分の身体を動かすような、そんな温かいエネルギーを大切にしていきたいなと、元気をたくさんもらったニュースでした。
みなさんは最近、どんな日常のなかの「楽しい優しさ」に出会いましたか?
このブログを読んで、少しでも写し絵と、創作の奥深さに興味を持っていただけたら嬉しいです。ぜひ、私たちの活動や公演(現在お休み中)にも注目してください。 現代影絵プロジェクトのウェブサイトはこちら: https://utsushie.org/ また次回の「写し絵の話しあれこれ」でお会いしましょう!